【為替初心者 #3】10年後のドル円は?
前々回は円安になるとオルカン保持者は嬉しい、というお話をしました。
前回は数年かけてゆっくりと円高になりそうだ、というお話をしました。
今回は10年後のドル円についてお話していこうと思います。
ドル円を動かす2つの要素
前回、日米の金利差でドル円が動くことをお話しました。
もう一つ、ドル円が動く要素があります。
それは貿易収支とサービス収支です。
貿易収支
例えば、あなたが輸入品であるiPhoneを日本円で買うとどうなるでしょうか?
iPhoneはアメリカの製品なので、日本円は米ドルに変換されてからiPhone購入となります。
円をドルに変換する際に、円を売ってドルを買うという動きが発生しますので、円安になります。
輸入が増えると円安になるのです。
日本の場合は石油やガスなどのエネルギー資源をたくさん輸入しています。
逆に輸出品のトヨタ車がアメリカで売れるとどうなるでしょうか?
アメリカで売れれば米ドルが手に入りますが、トヨタ社としては日本円で欲しいので、米ドルを日本円に変換します。
輸出が増えると円高になるのです。
日本の場合は、車や電子部品を主に輸出しています。
輸入/輸出が釣り合っていれば円安にも円高にもなりません。
実際のところは下記図のようになっています。https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2023/2023honbun/i2210000.html
2000-2010年は貿易黒字(輸出が多い)ため円高要因になっていますが、
2011年以降は貿易赤字(輸入が多い)ため円安要因になっています。
少し分解してみます。
■電子機器
2000-2010年はテレビなどの電子機器を海外に輸出していました。
しかし、中国韓国に負けて、日本テレビは売れなくなりました。
また、iPhoneを始めとした海外スマホの輸入が増えてきたのもこのころです。
ここ20年で電子機器は輸出超過から輸入超過に変わってしまいました。
■鉱物性燃料
2011年の地震をきっかけに日本は原子力発電をやめました。
そのため、火力発電を増やす必要があり、天然ガス等の輸入が増えました。
さらには、2022年のロシアの戦争をきっかけに天然ガスが値上がりして輸入が大幅増になっています。
■車関連
日本の頼みの綱の車産業ですが、近年、EV(電気自動車)が流行り始めています。
EVではトヨタを始めとした日本の会社は強みを出せなくなり、10~20年後には大幅な輸出減になりそうです。
上述した通り、貿易関連は輸入超過(円安要因)に流れが変わっていることがわかったと思います。
サービス収支
貿易は物の売買です。サービスの売買にも目を向けてみましょう。
ここ数年でサブスクが大きく流行り始めました。
- Youtube prime, amazon prime, netflix, Disney+などの動画サービス。
- Spotify, Amazon musicなどの音楽サービス。
- icloud, google driveなどのストレージサービス。
- Chat GPT, BardなどのチャットAIサービス。
- zoom, Teams(M365)などのWeb会議サービス。
他にもたくさんのサブスクがありますが、多くは海外のサービスです。
サブスクに日本円でお金を払うと、米ドル等に変換されるので、円安要因になります。
また、google playやApp Storeでスマホゲームの課金をすると、例え日本のゲームであっても、1,2割がgoogle社やapple社に手数料として流れます。
コロナの巣ごもりを皮切りにサブスクの利用は大幅に増えています。
今後も増える方向でしょう。
サービス関連でも円安要因が増えているのがわかると思います。
唐鎌先生の試算だと、貿易赤字とサービス赤字を合わせておよそ年間5兆円の赤字になるようです。(https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20240206/se1/00m/020/050000c)
まとめ
貿易赤字やサービス赤字による円安は、前回お話した金利差ほど大きな影響を与えません。
しかし、ボディーブローのように毎年積み重なっていくので、5,10年といった長期では大きな影響となります。
(金利差は行ったり来たりするので、長期では打ち消しあいます。そのため長期では金利差は大きな影響となりません。)
まとめると、貿易やサービス収支の観点では、10年後には大幅円安になりそうです。
もう一つ、長期で大きな円安要素があります。それは皆さんが始めている新NISAに関係があります。⇒次回に続く
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